傷ついた画布の物語
| 傷ついた画布の物語 |
戦没画学生慰霊美術館「無言館」の創立者である著者が画学生一人ひとりの生い立ちを追い取材した作品。表現したい、もっと勉強したい、そんな無念が濃厚に伝わってくる。若くして逝った画学生一人ひとりの姿を追うことによって見えてくる戦争の不条理。ここに登場する若者たちも戦闘で死んだ人は少ない、病死、餓死が圧倒的多い。あの戦争はなんだったのか、戦没画学生たちが私たちに伝えるものは…。
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戦没画学生慰霊美術館「無言館」の創立者である著者が画学生一人ひとりの生い立ちを追い取材した作品。表現したい、もっと勉強したい、そんな無念が濃厚に伝わってくる。若くして逝った画学生一人ひとりの姿を追うことによって見えてくる戦争の不条理。ここに登場する若者たちも戦闘で死んだ人は少ない、病死、餓死が圧倒的多い。あの戦争はなんだったのか、戦没画学生たちが私たちに伝えるものは…。
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地獄の日本兵―ニューギニア戦線の真相 (新潮新書 273) 著者:飯田 進 |
20万人以上の日本兵が上陸したニューギニア戦線の3年間の「戦闘」の真相に迫る作品。戦闘で死んだのはごく一部の兵士にすぎなかった。ほとんどの兵士が飢えと疲労とマラリアなどの伝染病で死んでいった。その凄惨な戦いをリアルに再現してくれる。あの戦争のひとつの真実がここにある。
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ボローニャ紀行 著者:井上 ひさし |
ボローニャは市民のレジスタンスでナチスの侵略をうち破った都市だ。その闘う伝統が今も息づいている。戦後、アカの街には補助金を出さないという攻撃にも、毅然と受け取らずがんばった心意気がすごい。市民の街を愛する心情、心意気に感心する。まさに連帯と協同の街づくりが実践されている。協同組合方式で事業化して行政が補助して成功させる知恵に感心した。こんなに愛せる自分たちの街があるということにうらましさを感じた。
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フランスジュネスの反乱―主張し行動する若者たち 著者:山本 三春 |
パリ郊外でおきた車の焼き討ち事件の背景が詳細に語られている。50年前に建てられた郊外の団地に移民2世、3世が収容されている。若者には仕事もない厳しい現実。毎日あじあう屈辱。少年二人の死から起きた若者の反乱と政府の対応の過ちが明らかにされる。そして、若者への解雇自由化法案の上程。フランスじゅうの組織がたちあがった。日本とおなじように新自由化路線が多くのワーキングプアを産みだしている。しかし、貧困は中流の暮らしをしている人にはみえない。それを顕在化させたのが、この2つの事件だった。フランスの労働組合、学生組織の闘う伝統はしっかりと次世代に引き継がれている。ワクワクするような闘いのダイナミズムがリアルに表現されていておもしろい。闘いは紆余曲折を経て前進していくことを物語ってくれる。
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ミャンマー―失われるアジアのふるさと 著者:坂斎 清,乃南 アサ |
ミャンマーに住み、生きる人々の息づかいがほんのりと伝わってくる。日本のニュースから漠然と感じる「怖ろしい国」というイメージとは違うミャンマーの姿がここにある。貧困にあえぐ人々、ひたすら祈る人々、祭りを精一杯楽しむ人々。日本から訪れた旅人にやさしい態度で接してくれるミャンマーの人々。何度持てもあきない素晴らしい写真がリアルにこの国の人々の一断面を伝えてくれる。そして、この国には第二次世界大戦で日本軍によって侵略された傷跡が生々しく残っている。
引用
「祖先とよぶにはあまりにも近い世代の日本人が刻みつけた歴史を、どう感じ取り、自分の中でどう処理すれば良いものであろうか。(略)たとえ戦争の実態を知らない世代であっても、この国の至る所に広がる緑を眺め、亜熱帯の強烈な陽射しと湿度の高い空気の中に身を置けば、時としてヒルに血を吸われ、マラリア蚊に全身を刺されながら、喘ぐように深い森の中を進まなければならなかった日本人たちのことを思わないわけにはいかない。なぜ、こんなところまで来なければならなかったのかと思う。哀れさと無念さ、憤りとやるせなさに胸が痛む。
同時に、勝手に踏み込んでこられて、何もかも奪われなければならなかった土地の人々のことも考えずにはいられない。彼らこそいい迷惑だ。イギリスといい、日本といい、国境を隔てた隣国ですらないのに、わざわざ遠いところからやってきて、人の土地を踏み荒らし、破壊し、血を流させ、家族を奪い、どれほどの人生を変えてしまったか。」
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ハロー、僕は生きてるよ。―イラク最激戦地からログイン 著者:カーシム・トゥルキ |
アメリカ軍がイラクで何をやってきたか。メディアは報道しない。その一端が本書から見えてくる。ファルージャの近くの町ラマディに住む青年が書いたブログとメールを元に彼の友人、高遠菜穂子と細井明美が再構成したもの。米軍に怯える住民、家族を殺され怒りに震えレジスタンスにむかう青年たちの姿がリアルに描写されている。著者のカシームは徹底して非暴力でこの事態を改善したいと願い、行動する。彼の願いが実現し、ラマディに平穏な日々が戻ってくる。今、彼らのの手で町の再建が取り組まれている。
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自衛隊員が死んでいく―“自殺事故”多発地帯からの報告 著者:三宅 勝久 |
武富士から1億1000万の損害賠償を求める口封じ裁判をおこされ話題をよんだ著者が、自衛隊員の借金が元での自殺の多さに気づき取材が始まった。そこから自衛隊員の異常な自殺率、組織の閉鎖性が浮き彫りになってきた。本書ではいじめによる自殺から遺族が国倍訴訟をおこした例や婦人自衛官のセクハラ訴訟などがとりあげられている。それぞれ裁判で明らかになった事実をもとに、丹念な取材がなされている。自衛隊という組織は国民を守るより、自らの組織を守ることの方を優先する組織だ、ということがよくわかった。戦艦武蔵のさいご (フォア文庫 C 17) で乗組員の渡辺清が描いた、古参兵が後輩の兵をいびり、いじめ、暴行を加えるという旧軍の図式は全く変わっていない。旧日本軍の血が脈々と現在の自衛隊に受け継がれているとは驚きであった。現代日本の常識が通用しない巨大組織が多額の税金で賄われているとは!!怒りを感じずにはおれない1冊でした。
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ルポ貧困大国アメリカ (岩波新書 新赤版 1112) 著者:堤 未果 |
黒田清日本ジャーナリスト新人賞を受賞した報道が教えてくれないアメリカ弱者革命―なぜあの国にまだ希望があるのか と重複する部分があるものの、さらに取材は深くイラク戦争がひきおこしている弱者へのしわ寄せに向かっている。最終章 世界中のワーキングプアが支える「民営化された戦争」は、高い医療費などによって貧困層に陥った労働者が派遣労働者として戦場へ向かい、白血病に冒されさらに苦しい生活を余儀なくされる家族を描いている。戦地への派遣労働者は死んでも遺体は祖国に帰ることはない。また戦死者としてカウントされることもない。それは「自己責任」の一語でかたづけられてしまう。弱者の視点からのパワフルな取材がもうひとつのアメリカを教えてくれる。
あとがきから引用
一つの国家や政府の利害ではなく、人間が人間らしく誇りを持って幸せに生きられるために書かれた憲法は、どんな理不尽な力がねじふせようとしても決して手放してはいけない理想であり、国をおかしな方向に誘導する政府にブレーキをかけるために私たちが持つ最強の武器でもある。それをものさしにして国民が現実をしっかりと見つめた時、紙の上の理念には息が吹き込まれ、民主主義は成熟しはじめるだろう。
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カブール・ノート
戦争しか知らない子どもたち
1979年12月25日のソ連軍のアフガン侵攻は衝撃的だった。翌年のモスクワオリンピックは西側諸国がボイコットした。あれから29年、アフガニスタンは戦争と内戦を繰り返していたのだ。戦争しか知らないこどもたちしかいないのだ。「とにかくみんな、出ていってくれ、我々の問題は我々だけで解決すると言いたいアフガン人が多いんじゃないだろうか」。タリバン政権がオサマ・ビン・ラディンをかくまっているというだけで報復戦争をはじめたアメリカ。タリバン政権が人権を侵害しているからと政権を崩壊させた。しかし、その後はアメリカの思い通りには進まず、内戦が激化しNATO軍が出動しているが、先が見えないたたかいになっている。もう、外国勢力はいっさい手をひき、アフガニスタン人の手に国の再建をまかせるしかないのではないか。西側や先進国の良かれと思って行う「人道的」な行いが悪い結果を産んできた歴史から学ぶ必要があるのだろう。アフガニスタンという国をちょっと知ることができた。
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憲兵政治―監視と恫喝の時代 著者:纐纈 厚 |
2007年6月6日日本共産党の志位委員長が行った「自衛隊による違憲・違法の国民監視活動を告発する」という記者会見は大きな衝撃を与えた。内容は自衛隊がイラク派兵反対などの市民運動や労働組合の活動を監視していたというものだ。この時のマスコミ報道で軍事専門家が「軍隊が国内の治安情報を集めるのは当然」というコメントをだしていたのを覚えている。自衛隊が国民の意思表示である集会やデモ、宣伝活動を敵視し恫喝する行為が当然と言えるのか。本書は国民を監視し、戦争に異を唱える国民を治安維持法により逮捕し拷問した体制を分析し、現在の自衛隊の国民監視にいかにつながっているのかを論証している。
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| 戦争熱症候群―傷つくアメリカ社会 著者:薄井 雅子 |
9・11以降、報復戦争一色に染まったかのようにみえるアメリカだが、5年が経過してそれもまだら模様になってきたようだ。公然とブッシュの先制戦略攻撃を批判して辞任する外交官や軍の将校たちも出ている。市民の中にも反戦の草の根運動が広がっている。テロリストを相手とした「永遠の戦争」で大もうけをしている軍需産業。年110兆円という税金を軍事費に充てるアメリカの歪んだ姿がリアルに一般市民の視点からレポートされている。最後のワタダ中尉のイラク戦争そのものを違法だとする裁判闘争は大変おもしろかった。違法なイラク戦争に協力すれば戦争犯罪者になるという論理は痛快だった。
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2003年12月、イラクへの自衛隊派遣を前に日本ペンクラブ平和委員会は「得意のやり方でこの現実を表現しよう」と緊急出版を企画し翌年3月に発行されたのが本書。第1部 創作 では吉岡 忍の3分間のテレビ番組の取材でベトナム・ソンミ村を取材し た舞台裏を小説化したもの。日本のメディアに対するアメリカの圧力に恐怖感を覚えた。米村 万里の「バグダッドの靴磨き」はロシアの新聞の掲載された現地レポートをもとに事実にもとづいて創作されたもの。どこにでもいる少年が米軍の言う「テロリスト」に成長していくさまがリアルに表現されている。イラクやアフガニスタンでは、こんな現実が今も続いているんだと思わせてくれる。力作・意欲作がいっぱい。緊急出版の熱い思いにライターたちが短期間で熱く応えた1冊だ。
第1部執筆者
浅田次郎 阿刀田高 安西水丸 大岡信 小中陽太郎 辻井喬 道浦母都子 梁石日 唯川恵 吉岡忍
第2部 「手紙」
落合恵子 小林エリカ 澤地久枝 立松和平 長薗安浩 日垣隆 森達也 養老猛司 吉田司
第3部 戦争表現の彼方
新井満 石坂啓 江川紹子 大石芳野 倉橋羊村 小谷真理 下重暁子 巽孝之 中西進 秦恒平 松本侑子 森詠 森まゆみ 渡辺えり子
第4部 エッセイ
赤瀬川準 雨宮処凛 池澤夏樹 井上ひさし 轡田隆史 計見一雄 高橋千剱破 田原総一朗 西木正明 保坂正康 三好徹
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トヨタ世界一の光と影 著者:岡 清彦 |
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| 酔いがさめたら、うちに帰ろう。 販売元:セブンアンドワイ セブンアンドワイで詳細を確認する |
戦場カメラマンとして世界の紛争地帯を駆けめぐった。そこで見た戦場の狂気は彼の心を蝕んでいた。帰国してからまさに浴びるようにお酒を飲むようになり、アルコール依存症に。本書はアルコール依存症になり離婚して、吐血を繰り返し、入院してからのことが描かれている。まさに壮絶な話なのだが、当の本人の視点からユーモラスに表現されている。アルコール依存症という病気の恐ろしさがリアルに伝わってくる。登場する女医も豪傑でおもしろい。著者は2007年3月20日腎臓がんで42歳の若さでこの世を去った。
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銃を持つ民主主義―「アメリカという国」のなりたち 著者:松尾 文夫 |
アメリカは建国当初から武力行使というDTAが備わっていた、という論理には説得力がある。アメリカ合衆国修正第2条をめぐる論争は興味をひく。アメリカという国にとって個人が銃を保有すること自体がひとつのアイデンティティーなのだというのがよくわかる。そしてこの「銃を持つ民主主義」はインディアンを排除し、黒人奴隷を「差別」するという暗い影をひきずりながら、西へ西へと拡大を続けてきた。それは太平洋をこえて続いた。負けしらずのアメリカの最初の敗北がベトナムであった。最後はベトナム人同士で戦わせるという結末を描き、撤退した。イラクも同じような結末になるのか。アメリカという国の底流を理解する上で役立つ1冊だった。
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著者:手塚 宗求 |
日本人は何を食べて生きのびてきたか?これを読むと、目についたものは、とりあえず食べてテスティングしてきたというのがよくわかる。そして、ぎりぎり食えるものが残ってきたのだ。しかし、時の変遷とともに今では全く食べられなくなったものも多い。幼少時からの体験と霧ヶ峰の山小屋暮らし40余年の経験から食の変遷を伝えてくれる。
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(講談社文庫)著者:司馬 遼太郎,井上 ひさし |
1996年に発行された対談集。12年も前のものだが今読んでも新鮮な内容だ。「美しき停滞」か「衰亡への疾走」かという、将来の日本の選択は的を得た指摘になっている。ダイナミズムを失ったジャーナリズムの衰退を鋭く指摘している点は共感した。
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同名のドキュメンタリー映画が話題になり、それを出版化したもの。読み応えのある本でした。日本の敗戦後5年もの間中国の八路軍と戦闘を続けた軍隊があった。戦犯から逃れたい日本軍の幹部と八路軍との戦闘に日本軍を利用したい山西省の軍閥の思惑が一致した。全員武装解除、帰国の方針を破って2600名の兵士を残留させた。これが組織的に行われた証拠を元兵士が執念で発掘している。本書はこれらの資料をもとに、この事件の経過をドラマチックに描いている。しかし、日本軍の責任者の自己保身と元兵士らへの裏切りには怒り心頭してしまった。
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1962年に書かれた本である。今も昔も読書術の基本に変わりはない。・ゆっくり読む本と速く読む本を分けろ・必ずしも全部読む必要はない・同時に数冊読み進めろ・難しい本は読むな・読まない工夫をしろ等、示唆に富む読書入門書です。
引用
それぞれの場合に応じて古典を読めば、それが道をひらくきっかけになるかもしれません。なぜなら、およそ本を読むときには、だれでもその本のなかに自分を読むものだからです。
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被爆から63年のなろうとする今、各地の裁判で負け続けた国は被爆者の認定基準をやっと見直すという。あまりに遅きに失したという言うべきであろう。63年たった今も苦しむ被爆者の方たち。肉体的な苦しみはもちろんだが、心の痛みはいっそう深く鋭くなっている。史上初めての原爆投下というまさに未曾有の事態が人間の心をいかに傷つけたかを現代の精神医学の観点から明らかにしている。「見捨て体験」による自責の感情、感情麻痺、フラッシュバック(引き戻さられ体験)等を例証している。多くの被爆者が重篤なPTSDを今もひきずっている。普通トラウマは時の経過とともにうすれていく。しかし被爆者は違う。放射能被害がどこまでも追いかけてくる。まわりで同じ被爆者が白血病や癌で死ぬ、自らも体調不良に悩まされる。そのたびに「あの日」がフラッシュバックする。阪神・淡路大震災にたとえるなら「震度5レベルの余震」が毎日のように62年間続いてきたようなものなのだ。しかも次に死ぬのは自分かもしれない。ここが、ほかのPTSDとまったく違う、ヒバクシャの心の傷の特徴なのである。
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映画「母べえ」に、有名な大本営発表の第1号が放送されるシーンがあった。このニュースを読んだ舘野アナウンサーは「そこは職業意識のためもあって、淡々と読んだ。興奮したらプロと言えませんからね」と回顧している。開戦後は大本営から「なるべく勇ましく読めと命じられたという。今では「大本営発表」という言葉は白を黒といいふくめるようなウソの代名詞として使われている。しかし、初めの半年あまり、つまり日本軍が勝ち進んでいた時は大本営発表はある程度正確に戦況を伝えていた。戦況が思わしくなくなると、嘘を発表するようになった。嘘が嘘をよび全く虚構の世界になっていった。この虚構の世界に軍の幹部は最後までしがみついた。夢は覚めれば現実に戻れるが、国を挙げて作ってしまった虚構の世界からは、おいそれと現実に戻ることはできない。大本営発表の怖さはそこにある。そして、海外派兵をすすめる現在も似た状況がつくられつつある。イラクのサマワに派兵された部隊の自由な取材は報道は完全に禁じられた。自衛隊が許可した映像、記事しかマスコミには流れない。現在も活動を続けている航空部隊が何をしているのか、映像も記事もほとんど流れてこない。戦争報道をいったん間違ってしまうと、国をとてつもない危険な導いてしまうという教訓を忘れてはならない。
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15歳で海軍に志願し、4年半の軍隊生活をし、戦艦武蔵から奇跡的に助かって帰国した著者の復員から8ヵ月の日記。身も心もきれいなままで天皇に一命を捧げると本気で思って戦闘の修羅場を体験してきた。この体験は「海の城」「戦艦大和の最期」に著者が書き表している。戦場で同期生のすべてを亡くし、ただ一人生還した苦しさがにじみでている。そしてその怒りは天皇へと向かい、天皇を信じた自分自身へと向かう。
引用
「たしかにおれは戦争について何も知らなかったし、何も知らされていなかった。正義のためだと教えこまれていた戦争が、実は無謀な侵略戦争であり、他国へのあこぎな強盗的行為であったのだと知ったのは敗戦になってからである。それはそれでいい。だがおれ自身がその戦争を賛美し、志願までしてそれに参加した人間であるという事実は、それによってすこしも消えることはない。侵略の兵士の一人であったことは変わりはない。これだけは自分のほかどこにももっていきようのないものだ。自分の責任としておれ自身が負わなければならないものだ。したがって、知らなかった、だまされていた、ということは責任の弁解にはなっても、責任そのものの解消にはならない。知らずにだまされていたとすれば、まずそのようにだまされていた自分自身にたいして責任があるのだと思う。」
「戦争は悪である。なぜならそれは人間を苦しめ、人間同士の殺し合いだからである。いまになってみれば至極あたりまえのこの不易の真理についてすら、当時のおれはすこしも考えてみなかった。そして、そのまま戦争を狂信的に賛美して、おめずおくせず、それこそピクニックにでも出掛けるような浮かれた気持ちで海兵団の団門をくぐったのである。しかもそれから4年もの間、あの血腥い殺戮の現場に居合わせながら、戦争の悪に眼を開くことができなかったのだ。
そのおれが戦争悪に目ざめるには同胞二百何十万、いや世界的には数千万をこえるという、気の遠くなるような人命の犠牲をまたなければならなかった。考えてみるとなんという苛酷な代償であったろう。何千万の血の代償によって、ようやく目ざめた責任意識。しかもそれは自分の内側から発したものではなく、敗戦によって外側から与えられたものである。」
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飯尾 憲士著
朝鮮人の特攻隊員がいた。日本占領下の時代、何を思ってつっこんでいったのか。著者の必要な取材の経過と平行しつつ謎にせまっていく。犠牲者は靖国神社に祀られているという、創氏改名された名前のままで。高山昇というやけくそでつけたような創氏改名の朝鮮人特攻隊員が「俺は、天皇陛下のために死ぬことはできぬ」と同僚に言ったという事実から物語りは始まる。彼が最期の見たであろう開聞岳の姿を私も一度見てみたい。
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| OD版 戦艦武蔵の最期 販売元:セブンアンドワイ ヤフー店 セブンアンドワイ ヤフー店で詳細を確認する |
著者は戦艦武蔵の実際の乗組員。沈没の際、奇跡的に助かった。助かった経緯は本書に詳しく書かれている。武蔵の沈没から27年を経て本書が出版されている。「書き残したい」という激しい思いと、「もう思い出したくない」という葛藤を繰り返して書かれた貴重な本だ。乗組員しか書けないリアルさがある。まるで映画を観ているような感覚に囚われるが、その悲惨さに胸をつかれる。著者はなぜ、戦友はこんなみじめな死に方を強いられたのかを問いただしている。
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(新潮選書)著者:長山 靖生 |
50を過ぎても老いることへの実感はなかなか湧いてこない。しかし本書を読んでやっと少し老いることへの恐怖感が湧いてきた。今ほど伝統が大切にされない社会はないという。伝統が生かされる社会は老人は大切にされる、今はその逆。60過ぎても身体も心も元気だが、それを生かす社会のしくみはできていない。自らの老後を考えると暗澹たる思いにかられてしまう。
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著者:鎌田 實,唐仁原 教久 |
日本から4000キロも離れたベラルーシの街で、チェルノブイリ原発事故により生後6ヶ月で被爆した少年の物語。白血病とたたかう少年を支援した日本の医療スタッフたち。著者もそのひとり。手術の成功で生きのびた命もたくさんあったが、残念ながら命を落としてしまった例もあった。著者はその遺族を一軒一軒訪問した。そこで出会わした、母親のすばらしいひとことがこの本になった。人間は絶望のなかにも希望をみいだすことができる。人間は悲しみのなかでも感謝することができる。厳寒のなかでのすばらしいエピソードに心が洗われました。
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著者:長倉 洋海 |
かなり以前に岩波新書の「フォト・ジャーナリストの眼」を読んだ記憶が蘇ってきた。フリーになり戦場カメラマンとして活躍するなかで、戦争によって破壊される人たちを直視してきた。家族を失った者のいえぬ悲しみに共感した時、戦争への見方が変わったと述べている。たった1枚の写真で世界を変えようと息こんでいた駆け出しの頃と違い、人間の生きる姿にピントを合わすようになった。大国の「国益」に翻弄される戦場の住民たちの側にたった視点で、戦争をやめさせるために何が必要かを考えさせてくれる1冊だった。
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著者:石子 順 |
手塚治虫は1984年に刊行した「手塚治虫漫画40年」の中で「終始一貫して、僕が自分の漫画の中で描こうとしているのものは、次の大きな主張です。”生命を大事にしよう!”」「この主張は、『自然の保護』『生きものへの讃歌』『科学文明』への疑い』『戦争反対』などのテーマにかえて、どの作品のも訴えたつもりです」と述べている。また1977年に書き下ろした「マンガの描き方」では、漫画家守るべきいましめとして「それは基本的人権だ。どんない痛烈な、どきつい問題を漫画で訴えてもいいのだが、基本的人権あだけでは、断じて茶化してはならない」と述べている。これはマンガの世界だけでなく。現在のマスコミ全般に通じる「いましめ」でもある。もう1度手塚治虫の作品を読みたくなった。
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―なぜいま、反グローバリズムなのか著者:辻井 喬 |
信濃毎日新聞に1年間執筆した随想に手を入れて集成した1冊。この人の時代を見る眼と「統一戦線をつらねば」という危機感は読者に迫ってくるものがある。悪しきナショナリズムが若者の心をとらえだしてもうかなりの月日がすぎさっていった。自分の生まれた土地や国に愛着心をもつのは当然のこと。学生時代、「祖国と学問のために」という学生運動の機関紙があったのを覚えている。「祖国日本」という響きには、どうしても右翼的な戦争を美化するイデオロギーを感じ取ってしまう。しかしもともとは革新勢力も祖国のために闘ってきたのである。そこらへんを大衆的に理解してもらうための努力が必要なのだと実感した。
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博士の本棚 著者:小川 洋子 |
著者の書評やエッセーをまとめた1冊。すばらしい小説はストーリーを語り出したとたんつまらなくなる。逆に言えば、たいしたストーリーでもないのにすばらしい物語がそこにある。作家小川洋子の原点がよくわかる1冊だ。愛犬との生活を綴ったエッセーも面白い。
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(2006)販売元:文藝春秋 |
日本新聞協会が募集した「あなたをハッピーにした新聞記事とコメント」から優秀作品をまとめた1冊。なにげない新聞の記事に読者が勇気づけられたり、感動したり、共感したりしている様子が思い浮かんでくる。汚職や凶悪犯罪だけでなく、新聞は日常のちょっとしたドラマを読者に提供してくれる。なにげない記事の中にまだまだこの世界捨てたモンじゃないと思わせてくれるものがある。コメントを書いている人たちが11歳や12歳という少年・少女が多く、そのコメント力にも脱帽。
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著者:吉田 紗知 |
昭和54年生まれの著者がおじいちゃんの死を契機に戦争体験にを持ち、8月15日の終戦後に特攻に飛びたった親族がいることを知る。この人の記録を残したいと思いたち、取材に駆けめぐる。取材を通して成長していく著者の姿がまぶしい。特攻に対してのさまざまな見方、また遺族や関係者からの意外な反応にとまっどたり、落ち込んだりしながらも真実に近づいていく姿がエネルギッシュでたくましい。
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| 米原万里の「愛の法則」 (集英社新書 406F) 著者:米原 万里 |
高校生を相手によくこんなストレートな表現で男と女について語ったものだ。「女は本流、男はサンプル」妙に納得してしまった。後半の翻訳業について語っているところは、伝わらない悲しさを経験したことが、伝える喜びを知ることになった、という逆説が面白かった。要所要所に得意の下ネタが生かされて楽しく読めます。
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| 戦争する国、平和する国―ノーベル平和賞受賞者現コスタリカ大統領オスカル・アリアス・サンチェス氏と語る 著者:小出 五郎 |
著者はNHKスペシャル「驚異の小宇宙・人体」なども手がけた元NHK解説委員の科学ジャーナリスト。NHK・BSの「21世紀へのパイオニア」という番組でコスタリカ大統領オスカル・アリアス・サンチェス氏にインタビューしたものが主体になっている。軍備を捨て教育へ予算を回し、非武装での立国を内外に積極的に発信してきたアリアス氏。1987年に紛争続きの中米に平和をもたらしたとしてノーベル平和賞を受賞している。
インタビューから 「自由な選挙、それによる各国国民の主権、自治の意志を尊重して民主的な社会をつくってこそ、はじめて平和がもたらされるのです。これは軍事力ではできません。話し合いで説得する以外に方法はないのです。ですから、武力を廃して、中米地域の和平を話し合いで実現することは、リスクではありません。私たちの努めでした。私は4ヵ国とじっくり話し合い、説得をしました。中米地域の3000万人の運命が、話し合いの結果に委ねられていたからこそ、やりがいがあり、できたのです」
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著者:堀川 惠子,小笠原 信之 |
1945年8月6日、広島市内を走っていたチンチン電車70両も被爆した。この時チンチン電車に乗務していた運転士・車掌の7割は14歳から17歳の少女だった。徴兵で乗務員が確保できななくなった広島電鉄は急遽「広島電鉄家政女学校」を創立し、「勉強しながらお給料ももらえる」というふれこみで、広島周辺の山村から女学生を集め短い教育機関で電車に乗務させた。この物語は始め「チンチン電車と女学生~2003・夏・ヒロシマ」というテレビドキュメンタリーとして放映され、日本民間放送連盟賞・教養番組部門の最優秀賞となった。本書はこの物語をもとに、取材過程や取材者の心の動きなども鮮明に表わしている。被爆3日後には復旧したチンチン電車、それを運転したのも女学生だった。当時の女学生を追い続け、被爆体験、被爆したことによる差別と向き合い表現していく著者の葛藤もみてとれる。
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―第五福竜丸・乗組員が語る著者:大石 又七 |
第五福竜丸で被爆した乗組員の多くが肝硬変・肝臓癌で亡くなっている。これは被爆後の治療で行われた輸血によるC型肝炎によるものとされている。著者の大石さんは、この事件から逃れるため東京に居を移した。大石さんが人前で被爆のことを話すきっかけになったのは、和光中学のひとりの盲目の少女だった。文化祭のテーマで第五福竜丸をとりあげ、大石さんの所に取材にきた5~6人の中に盲目の高橋しのぶさんがいた。この子にわかってもらいたいと大石さんは第五福竜丸の模型を作って学校に寄贈した。これがテレビで放映され、話題をよんだ。初めての子を奇形で死産した大石さんの核兵器に対する怒りは強かった。事件が風化していくなかでなんとか死んでいった仲間のたちのためにも、この事件を伝えていきたいと、積極的に講演活動を行うようになった。わづかな補償金でアメリカ政府と合意して決着をはかった日本政府の意図がよくわかった。
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| 自壊する帝国 著者:佐藤 優 |
ソ連崩壊の舞台裏を外交官の視点からドラマチックに描いた佳作。レストランの料理の描き方もおいしそう。しかし、著者の酒豪ぶりには唖然とする。よくそれだけ呑んで正常に頭が回転するものだ。この本を読んでいて、今の日本と似てない?と感じてしまった。官僚機構の腐敗ぶりは負けず劣らずなのだ。自民党政権も自壊の道を進んでいるのか?一方、あのソ連で最後まで社会主義の理想をめざしていた政治家もいたことに関心した。しかし、一旦、崩れ出すと国家といえども一瞬に消えてしまうことを実感した。
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販売元:かもがわ出版 |
地雷国際キャンペーン、ノーベル平和賞受賞者
ジョディ・ウイリアムズ
私は、一人の地球市民として憲法九条を支持します。
もうこれ以上の軍事化は必要なく、多額のお金は我々が今直面している諸問題を解決するために使われるべきです。すべての国の憲法が九条を持つべきです。必要なのは、そのような国際キャンペーンを行うことであって、九条を日本から取り除くことではありません。
ボスニア・ヘルツエゴビナのジャーナリスト
ヤスナ・バスティッチ
国民の大半が受け身でいると、望みもせず、同意もしない方向に政治が動いてしまうことはめずらしくありません。旧ユーゴ紛争を防ぐために私や友人たちは一体何をしたのだろう、と私はよく自分に問いかけます。そして、私たちは十分なことをしていなかったのだということに思い至るのです。
湾岸戦争に従軍、ジャーナリスト
平和つくるために一番重要なのは兵器の生産をやめることだと思います。私の考えと日本の九条はそういうところでつながると思います。
憲法九条は世界の中での日本の顔です。日本には「テクノロジーの国」「現代的」「優しくて戦争を好まない国」などいいイメージがあります。しかし九条を変えてしまったら日本に対するこのようないいイメージも変わってしまします。
核戦争防止国際医師会議ケニア支部代表
ポール・サオケ
憲法九条がもし破棄されたら、日本も軍事費が重い負担となってのしかかっている国々の仲間入りをすることになるでしょう。そうなれば、まさに今のアメリカがそうであるように、社会に向けられるべき予算が軍を維持するために使われてしまい、国民の社会保障は低下していきます。
国連ルワンダ国際刑事法廷弁護人
ピーター・アーリンダー
制御不能とも思える軍産複合体に、20世紀後半になってアメリカが支配されてしまったことは、日本そして世界の人々への教訓です。日本の平和憲法九条を守り広める努力は、理想主義的な願いではなく、全世界の人々との共同の努力なのです。九条を守るたたかいは、実は、世界第二位の経済大国、日本に軍産複合体が復活するのを阻止するたたかいなのです。
韓国仁荷大法学部教授
李京柱(イ・キョンジュ)
日本国憲法九条はアジア諸国に対する日本の「必要最小限度の不戦の誓い」としての意味合いを持っています。九条の戦争放棄と戦力保持禁止条項は敗戦の結果でもありますが、同時に「再び戦争をしない、民衆を動員しない、殺さない」というアジアに対する約束でもあります。このような憲法九条を改訂することはアジア民衆に対する約束違反なのです。
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著者:雨宮 処凛 |
自分の住所すら持てない若者がいつからこんなに増えてしまったのだろう。毎日、最低限の暮らしを送るだけで精一杯。明日に何の希望も見いだせない。親からも責められ、社会からは自己責任だと白眼視される。そして、この安い労働力を使って史上最高の利益をあげる大企業。「持続可能な成長」どころか社会を破綻させるいびつな成長に邁進する日本の企業。そのしわ寄せが若者をおそっている。当事者へのインタビューで難民化する若者たちの実態を浮かびあがらせている。
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著者:シルヴァン・ダルニル,マチュー・ルルー,永田 千奈販売元:日経BP社 Amazon.co.jpで詳細を確認する |
元気の出る本でした。ブラジルで知り合った若者が世界の起業家に会いに行く旅をする。起業家といっても、ソーシヤルアントプレンナー、社会起業家と訳している。つまり、利益だけを目的にするのではなく、地球環境を守り、人間のくらしを良くすることに情熱を注ぐ起業家たちだ。環境問題や貧困との闘いに情熱を傾け、しかもビジネスとしてちゃんと成り立つようにしているところがすごい。「持続可能な成長」をめざすアイディアがたっぷり詰まった一冊だ。
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著者:佐藤 忠男 |
映画評論で有名な著者が長年疑問に思っていたことを本にした。なぜ、自分は軍国少年になってしまったの?という素朴な疑問に実体験をもとに迫っていく。いつのまに「捕虜になったら自殺しなければならない」と思いこむようになったのか?少年時代の思考を思い出しながら、謎にせまっていく。また、日本の戦意高揚映画を分析して「これは反戦映画だ」といったフランク・キャップラ監督の話や中国やアジアで戦争はどう描かれているかという話もおもしろかった。
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著者:ヴィクトール・E・フランクル |
ナチスにより収容所に送られた精神科医が自らの体験を客観視して書き上げた魂の本。
引用
「人は強制収容所に人間をぶちこんですべてを奪うことができるが、たったひとつ、あたえられた環境でいかにふるまうかという、人間としての最後の自由は奪えない」
「収容所にあっても完全な内なる自由を表明し、苦悩があってこそ可能な価値の実現へと飛躍できたのは、ほんのわずかな人びとだけだったかもしれない。けれども、それがたったひとりだったとしても、人間の内面は外的な運命より強靱なのだということを証明してあまりある。」
「このひとりひとりの人間にそなわっているかけがえのなさは、意識されたとたん、人間が生きるということ、生きつづけるということにたいして担っている責任の重さを、そっくりと、まざまざと気づかせる。自分を待っている仕事や愛する人間にたいする責任を自覚した人間は、生きることから降りられない。まさに、自分が「なぜ」存在するかを知っているので、ほとんどあらゆる「どのように」にも耐えられるのだ。」
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著者:田月仙 |
日本が朝鮮を侵略し36年に及ぶ統治を行った。そこから始まった数々の悲劇。そして現在も慟哭している人々がいる。北朝鮮への帰還運動が生んだ悲劇。まともな理由もなくスパイ扱いされ強制収容所へ収監された兄弟との再会。在日コリアンとしてたくましく生きながら、家族の癒されぬ悲劇に立ち向かう。日本統治時代に歌うことが禁止された歌、歌うことを強制された歌。韓国が日本の大衆歌謡を禁止してきた背景、その心にも迫る。華麗な舞台と哀しみをふくんだ祖国、故郷への複雑な思いが描かれている。
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著者:藤井 青銅 |
全く私と同じ昭和30年生まれの作者だけに、懐かしいあの時代が彷彿と浮かんできた。駆け出しのラジオの放送作家の物語。そういえばラジオドラマというのを中学生時代に時々聞いていた。テレビと違って異様な集中力が必要な番組だった。でも、なにか新鮮な感じを覚えた。頭の広がるドラマの世界の面白さあった。そんな番組の制作者の高揚した感じがリアルに登場人物も実名で書かれていて面白かった。
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著者:有田 芳生 |
今日で天安門事件から18年がたった。中国国内の民主化運動が高揚しつつある18年前の5月28日、海外在住の中国人により「全世界華人抗議デー」が開かれた。参加を迷っていたテレサ・テンは当日出演を決意する。胸に「反対軍管」(軍事独裁体制を許すな)背中には「我愛民主」と自ら作ったプラカードを下げて、化粧もぜずサングラスをかけて舞台にたった。その姿はテレビでみていた、あの愛くるしいテレサ・テンとは別人だった。そこで歌った歌の題名がこの本のタイトルになっている。天安門事件以降、彼女は気持ちの高まりから涙を流してしまうことが多くなった。「中国と闘って生きていきます」とインタビューにこたえた彼女の思いがよく描かれている。
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「モスクワやレニングラードのマイナス30度よりヤクーツクのマイナス55度の方がすごしやすいんです」 人間の身体は恐ろしい適応力を持っている。屋内プラス20度屋外マイナス50度70度の温度差にも平気で暮らせるようになるという。いやー驚きの1冊でした。
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ノンフィクションライター井田真木子の作品。1980年代少女たちの間に大ブームを巻き起こした女子プロレス。ブームの立て役者はライオネス飛鳥と長与千種のクラッシュギャルズと悪役のダンプ松本。本書では、柔道の選手だった神取しのぶ、中国から来た天田麗文、アメリカ人のデブラ・ミッシェリーの3選手に光をあて、自分の居場所を求める「旅」を描いた。そこにあらわれたまだ10代の女子プロレスラーの肉声にひきつけられた。たとえば神取しのぶのジャッキー佐藤との「ケンカマッチ」についての発言「あの試合とき、考えていたことは勝つことじゃないもん。相手の心を折ることだったもん。骨でも、肉でもない、心を折ることを考えていた。」神取しのぶ鬼気せまる闘う姿とこの言葉の迫力に圧倒された。
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大阪城話 著者:渡辺 武 |
長い間大阪城天守閣に勤めてきた著者が天守閣にまつまるエピソードを明かしてくれる。大阪城のもつ郷土民族資料館としての価値の高さを再認識した。大阪城の重要な採石地のひとつに小豆島がある。渡辺さんと小豆島の人たちとの交流話しは興味深かった。渡辺さんの品がって豪快な性格がよくあらわれていて楽しく読ませていただいた。
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戦略爆撃の思想―ゲルニカ・重慶・広島 著者:前田 哲男 |
第1次世界大戦までは、基本的に戦争は軍と軍との戦いであった。それが一般住民への無差別殺戮へと変貌していく。一般住民の住む街に空から大量の爆弾をばらまく。それはゲルニカに始まり、重慶で2年半に渡り執拗に繰り返された。焼夷弾により街を焼き尽くす作戦も重慶でその効果がはじめて発揮された。数年後にはその焼夷弾によって日本の都市が燃やされる。本書は重慶への戦略爆撃作戦を中国側と日本側からの目でリアルに再現している。
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心がぽかぽかするニュース 販売元:文藝春秋 |
日本新聞協会の2005年度「HAPPY NEWSキャンペーン」に応募された作品の1部が掲載されている。こころにジーンとくる記事、思わずニヤリとしてしまう記事。特に地方の新聞におもしろい記事が多かった。なにげない日常のなかから切り取った心温まる記事は、記者の鋭いニュース感覚が生み出している。日日常的な事ばかりがニュースではない。新聞のもつ特性が、これらの記事によく表現されていると思う。
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約1年間で6500キロを歩いてソ連の収容所から脱出した7人の男たちと途中で出会った1人の少女の極限のサバイバルノンフィクション。身に覚えの無いスパイ容疑で捕まった25歳のポーランドの青年が25年の刑を受ける。そして極寒のシベリアへ。収容所に着くまでもすごいサバイバル体験と言える。あと25年もここでこんな生活を繰り返すのかと暗澹とした思いから、脱出を決意する。シベリアからインドまでの脱出劇。生きのびるために、自由を得るために、最後まであきらめなかった人たち。最後にはヒマラヤ山脈の岩場を登攀する。まさに究極のサバイバル。実話だというのがしんじられないくらいだ。
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二人のアキラ、美枝子の山 著者:平塚 晶人 |
二人のアキラ、一人は「風雪のビヴァーク」の松涛明、もうひとりは第2次RCCを立ち上げた奥山章。美枝子は奥山の妻になった人。この美枝子さんと著者との書簡のよりとりの形で編まれた一冊。戦前、厳しい登攀を求めてさまざまな摩擦を起こした松涛のようすが意外な側面を教えてくれる。戦後になり、空前の登山ブームの中、第1線のアルピニストだった二人の足跡、心の揺れが伝わってくる。短く熱く生きた当時のクライマーの思いが伝わってくる。
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役者六十年 著者:中山 敬三,小林 桂樹 |
そんなに似てないけれど、この人がテレビに出てくるとなぜか北海道の父を思い出す。戦後すぐに小林桂樹が出た「社長」シリーズはなんと35作まで続いたという、寅さん並みの作品なのだ。多くの名監督、名俳優との出会いを思いだしながら、その時の思いを実直に語っている。ほんとにまじめで、俳優という仕事を今現在も極めようとしている姿勢に心打たれるものがある。演技をやるとき「これでいいのか」と自問自答しながらすすめるスタイルは今井正監督から学んだという。当時のおもしろいエピソードもふんだんで楽しく読めた。
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他諺の空似 ことわざ人類学 著者:米原 万里 |
この本流に、柳沢厚労省大臣の発言を例えるなら、「覆水盆に返らず」(日本)「抜けた頭髪は二度と元の頭には戻ってくれない」(ロシア)「吐いた唾は口の中に戻れない」(アラブ)「70匹の鼠を喰った猫がメッカ参りをしても神様には許されない」(パキスタン)。また、発言後の対応は「後の祭り」(日本)「家に火がついてから井戸を掘る」(ネパール)「嵐の後に戸にかんぬきをするな」(フィリッピン)、となる。著者得意の色っぽいジョーク、古今東西の諺、そして当時の小泉政治への歯に衣をきせぬ批判がないまぜになって独特の雰囲気を醸し出す異色の本だ。
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読む力・聴く力 著者:河合 隼雄,谷川 俊太郎,立花 隆 |
「絵本・児童文学研究センター」主催第10回文化セミナー「読む 聞く」を記録したのが本書。谷川氏も立花氏も、昔ラジオ少年だったとは意外。物理的な聞く行為と伝えたいことが伝わることの違い。人間の脳のすばらしさを再認識した。立花氏の「インターネットの世界も出会いです」とリアルな世界との同質性に着目しているのが新鮮だった。
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必笑小咄のテクニック 著者:米原 万里 |
ジョーク、ショートショート、しゃれの効いた小咄は人生の清涼剤。それを類型化しそのテクニックの抽出を試みた。作例がふんだんで、著者得意の下ネタもたっぷり披露されています。それぞれの章に問題も用意されていて、読者のセンスも問われる。本書は闘病中にまとめられ遺作となった。
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新編 石川啄木 著者:金田一 京助 |
若くして一家を背負うようになり、貧困に喘ぐ啄木。しかし借金を重ねながらも、あっけらかんとして、酒を飲み、女遊びもする啄木。なかなか啄木の人間像はとらえがたい。しかし、生活そのものを歌に託し表現した啄木のすごさには驚く。しかも、貧困を社会のシステムの問題としてとらえ、病をおして、深く探求していく姿は壮絶そのもの言える。社会主義に理想をみた啄木の最期がリアルに描かれている。
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アジア新聞屋台村 著者:高野 秀行 |
ミニコミ編集に携わる者として大変興味深く、面白かった。アジア各国の人たちが集まる編集部。共通語は日本語。編集の基礎知識も無い人たちが作るミニコミ紙。行動派の女性社長の豪快な経営方針に度肝を抜かれる。アジア各国のお国事情が紙面にも反映する。しぶといアジア人の心意気が伝わってくる作品だった。
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石川啄木―その社会主義への道 著者:碓田 のぼる |
酒が好きで女も好きな人間くさい啄木。反面、ものごとを突き詰めて考えるとてもシリアスな面を持つ。「大逆事件」にショックを受け、社会主義に傾倒していく。自らの貧困のから社会の矛盾を鋭く洞察していた。また、啄木は大変な熱血先生だったようだ。自ら「日本一の代用教員」といっているように、上から押し付けられたカリキュラムに満足せず、独自の教材で生徒に合った授業をつらぬいた。
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報道が教えてくれないアメリカ弱者革命―なぜあの国にまだ希望があるのか 著者:堤 未果 |
次に食べられるあてのない状態を飢餓状態という。アメリカには3500万人が飢餓状態になっている。規制緩和、市場経済の徹底で貧困層が増える一方だという。イラクに派遣されている兵士は主にこの貧困層の子どもたちだ。希望のない暮らしのなか「大学へ行かしてやる」と甘い声が貧困にあえぐ高校生にかけられる。6週間の訓練でイラクへ。そこで考えてもいなかった人殺しを強要される。帰還兵は5人に1人がPTSDになっている。働くこともできず帰還兵からホームレスになった人は30万人ともいわれている。それでも、あきらめずにこの国のもうひとつの未来をつくろうとする人たちがいる。
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あなたの話はなぜ「通じない」のか 著者:山田 ズーニー |
著者はベネッセ・コーポレーションで小論文の教材作成をやり、その後独立しコミュニケーションの実践的研究を行っている。やはり、基本は誠実さと相手を思いやること。でも、組織や現実社会の中では、それを分かってもらうためのテクニックが必要。「正論」が好きな私には、大変反省させられた。「正論」は知らず知らずのうちに、相手を見下し、反感をうみだす。それを相手に受け入れさせるためには、それなりのテクニックと思いやりが必要なのだ。
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帰還せず 残留日本兵 六〇年目の証言 著者:青沼 陽一郎 |
日本の軍人は戦って死ぬか、勝って帰るかしか考えていなかった。負けて帰国するという選択肢は全く持っていなかった。南方で終戦を迎えた兵士たちの動揺がよく描かれている。戦争は終っているのに、隊から離れてしまった兵士は「逃亡兵」という意識を持ち隊には2度と帰れないと思いこんでしまった。そのうち、現地の女性と知り合い家族ができ、そこに根ざしてしまう。一人ひとりをインタビューした力作だ。日本に帰ってもなにもないから、家族も帰る家も無いから帰らなかったという人が多い。そして、インドネシア独立軍に参加してイギリスやオランダ軍と戦う現地の兵士を教育することになる。当時は、その選択が意外にも、軽い気持ちで自然になされていた。南方の兵士が終戦をどう迎えたかリアルに伝わってくる作品だった。
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玉砕/Gyokusai 著者:小田 実,ドナルド キーン,ティナ ペプラー |
「玉砕」の由来は中国の故事で「土の瓦となって生きながらえるより、砕けた宝石となって死んだ方がいい」からきている、というのを知った。この小説は先日観た「父親たちの星条旗」の戦闘シーンそのままで驚いた。これは、硫黄島を題材としていないが、アッツ島「玉砕」以降南太平洋の島々で次々と「玉砕」していく日本軍。それらの教訓を生かし戦力の決定的な差を戦術で「勝とう」とした日本軍の惨劇がリアルに描かれている。小田実氏の作品では初めての英語訳で出版され、イギリスBBC放送がラジオドラマ化した。その台本も収録されていて、興味深く読めた。
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寄る辺なき時代の希望―人は死ぬのになぜ生きるのか 著者:田口 ランディ |
自分自身で納得できないものは、根本的なところから考え直すという著者の態度に共感を覚える。自分の感性に正直にものごとを見て、素直に考えていく。そこが、面白い。ひきこもりの兄を餓死で失った体験から、人間ほんとに働かなくてはいけないの?と問い直す。役に立たない人間は必要ないの?べてるの家の実践が大変興味深く読めた。
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マイノリティーの拳 著者:林 壮一 |
40代後半になってもリングに立ち続ける元世界チャンピオン達を追ったノンフィクション作品。アメリカでは単に世界チャンピオンになっただけでは大きく報道もされない。WBF、WBC、IBF、の主要3タイトルを手にしてはじめてファンに認知される。だから世界チャンピオンになっただけで暮らしていけるわけではない。多くの元世界チャンピオンが歳を重ねてもリングに立ち続けないと生活していけないのだ。その上ファイトマネーをごっそりプロモーターにもっていかれる、ボクサーに渡るのはその1部でしかない。最後に出てくるジョージ・フォアマンとアリの試合はリアルタイムでみていた。今でも鮮明に、ロープを背にしたアリを打ち続けるフォアマンの姿を思い出す。そのフォアマンがあの試合を振り返り「私は彼の生き方から『尊厳』という語の意味を学んだ。あの試合も、彼が私を打ち負かしたというより、私が自分自身を潰してしまったんだ」と語っているたのが印象的だった。
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ベラ・チャスラフスカ 最も美しく 著者:後藤 正治 |
数年前に読んだプラハの春〈上〉 プラハの春〈下〉 に東京・メキシコオリンピックで活躍したチャスラフスカのことがでていた。社会主義の改革を支持した金メダリスト。ワルシャワ軍の戦車により改革はつぶされる。でも、その後も彼女は度重なる当局の圧力に屈せず節を曲げなかった。そのため仕事を奪われた。重苦しい軟禁状態の最低限のくらしに耐えた。それから20年後1989年11月24日、彼女は大観衆を前にバルコニーの上から「もう何回も、わたしは堂々とした態度と勇気を示さねばなりませんでした。スポーツ選手として、また人間としても。今言わせてもらえるでしょう。わたしは卑怯者ではないのだと」と語った。会場の片隅で聞いていた80を超える老婆が熱い涙を流してつぶやいた「私のベラ」。
その後彼女は大統領顧問、チェコ五輪委員会会長を勤める。しかし、息子が彼女の元の夫を殺してしまう事件が起き、その有罪判決後精神に異常をきたし入院生活を送ることになる。
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| いま、普通に生きる 著者:米倉 斉加年 |
米倉さんが師匠と仰ぐ宇野重吉から、はじめてダメだしされたのが「普通に言え」だった。普通を演じる難しさ、そして今の世の中、普通に生きるのも難しい。終戦間近に弟を飢えで亡くしてしまった痛恨の思いが、年が経てばたつほど深い傷になっていくのが伝わってきた。演劇では食えないからと始めた絵でボローニャ国際自動図書展グラフィック大賞を受賞。戦争3部作というこの人の絵本も1度読んでみたい。
住井すえさんとの対談で「日本の教育というのは、いってみれば教育じゃなくて調教ですからね」「走らせるために訓練するのは、教育とはいわずに調教すると言うんですよ」との発言が心に響いた。今まさに教育基本法改定は「教育」から「調教」への国家的転換と言えるだろう。この後には全国一斉学力テストの実施が計画されている。一握りの勝ち馬を探し出すために全国の子どもたちを巻き込み多数の「駄馬」の烙印を押そうとしている。
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アンネ・フランクの記憶 著者:小川 洋子 |
中学1年生の時に出会ったこの本が作家になる道の入り口だった。「言葉とはこれほど自由自在に人の内面を表現してくれるものかと驚き」自分自身も日記をつけるようになり、そのうち創作まがいのものができ、小説へとつながっていったという。そんなアンネの暮らした家や隠れ家そして小学校時代の親友に会いにいく旅が描かれている。たった12時間飛行機を乗ると、アンネと同時代を過ごした人たちと出会える。アンネ・フランクは日記の中だけの存在ではない。アンネ・フランクを通してユダヤ人の尊厳を奪いとったナチズムの狂気が、その現場を訪れ生々しく伝わってくる。いつかここに挙げられている関連の本も読んでみたい。
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サバイバル登山家 著者:服部 文祥 |
フリークライミングの延長線上がサバイバル登山になるとは驚きである。「生身の人間でどこまでできるか」という思いが、食料は米だけ、燃料はメタだけ、という現地調達登山へと発展していった。登山はビビルからこそおもしろい。情報も道具も最小限に抑え、でっかい山塊にひとりで挑む醍醐味を私も少し味あうことができた。後半の冬季黒部の初登攀も豪放磊落なメンバーと厳しい登攀を楽しんでいるようすが伝わってきた。
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子ども兵の戦争 著者:P.W. シンガー |
人類が戦争を始めてから4000年間、「子どもは兵隊に使わない」という掟があった。それがこのたった20年の間に、子どもが戦場にいるのは常識になってきた。現在85ヵ国で最低で30万人の18歳以下の兵士がいると推定されている。子どもの兵は成人の兵隊より残酷で冷酷とされてる。この背景には、グローバル化の進展による貧困の拡大、冷戦終結後の武器のダンピング、政情の不安定化、武器の軽量化と高度化が挙げられている。そしてコストの安さ。こどもの兵は誘拐や拉致によって、いとも簡単に確保できその上報酬も払わずに済む。殺し合いが日常的になっている国に産まれ、ひとりぼっちになったら、自ら進んで兵に志願するしか食べ物にありつけない。驚きのレポートです。
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介護と恋愛 著者:遙 洋子 |
介護をするためにのばしていた爪を切った。何を捨て、何を守っていくのか。やりたいことと、やらなければならないこと。現実の生活の中で選択が迫られる。1日24時間という限られた中で、仕事も介護も恋愛も100%充足されることはできない。ここで問題なのは、女性の場合恋愛を選択すると他のすべてを失わなければならないということだ。それを男はわかろうとしない。なかなかに深い問題を軽妙なテンポで表現していて一気に読める「問題作」でした。
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パンツの面目ふんどしの沽券 著者:米原 万里 |
人間の下半身を覆うものについての国際的な探求。著者が幼い頃プラハで育ったためにそれは社会主義圏のパンツ及びその有無という考察から始まる。社会主義圏の子どもはパンツを自分で縫い上げるのは常識!等々。これが筑摩書房の出す格調高い雑誌『ちくま』に連載されたものだとは、ちょっと信じられない!軽妙に描かれる下半身の世界に思わず笑いがもれる。電車ではちょっと読みにくい本だ。
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「無言館」の青春 著者:窪島 誠一郎 |
戦争ドラマでよく出てくる学徒出陣のシーン。よく考えれば当たり前のことなのだが、あの中に美大に通う学生たちがいた。その学生たちが書き残した作品を展示しているのが上田市にある無言館。出征を前にして最後まで絵筆を握り描き続けた学生たちの作品。そんな作品の一部が本書で紹介されている。作品は無言だが来館者に強いメッセージを与える。残された作品と現在を生きる来館者とのコミュニケーションが新たな作品世界を作りがしている。
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嘘つきアーニャの真っ赤な真実 著者:米原 万里 |
大宅壮一ノンフィクション賞をとった作品。でも、これがノンフィクション?と思うくらいドラマチックでしかも楽しく読める作品。米原万里は9歳から14歳までの多感な時期をプラハで過ごし在プラハ・ソビエト学校に通った。そこで親しくなった級友たちを30数年ぶりに探しだし再会する物語。その背景に「プラハの春」、社会主義諸国の崩壊、民族紛争がからんでくる。激動の歴史と翻弄されながらもけなげに生き抜いていた級友達。しかも、日本共産党と対ソ連との関係までもが影を落としてくる。と書くと大変シリアスな作品に感じるが、冒頭から下ネタありのユーモアたっぷりに描かれている。
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絵はがきにされた少年 著者:藤原 章生 |
3部構成の11章で、1章づつ読み切りになっている。著者は毎日新聞特派員として6年間アフリカで取材した。その経験から、等身大のアフリカを11の話として描いている。メディアからの断片的情報で私自身の中で作られたアフリカのイメージがいかに歪んだものであるかを痛感した。名も無き老人との長時間にわたるインタビューから掘り出してきた言葉に、日本人が失ってきたもの、もう取り戻せないものがここにはあると気づかせてくれる。新聞的には「見出しどころ」のない話が多いが、だからこそ本にまとめたっかのだろう。この本は第3回開高健ノンフィクション賞を受賞している。
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下山事件―最後の証言 著者:柴田 哲孝 |
土日2日間つかって450頁に及ぶ力作を読み切った。ずいぶん昔下山事件の映画を観たのをうっすらと覚えている。松本清張の「日本の黒い霧」のGHQの陰謀説やその後のCIA主犯説を覆す新たな見解。そこにたどり着くまでのさまざまな情報の吟味。取材過程の緊張感がサスペンスに満ちている。60年間隠され続けられたものは何か。日米支配層の陰の部分に光をあて、脈々と続く巨大利権と腐敗の構造に事件の本質があることを論証していく。
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えひめ丸事件―語られざる真実を追う 著者:ピーター アーリンダー,薄井 雅子 |
一晩で一気に読んでしまいました。事件のあった年の6月に私の勤務する機関紙協会大阪の総会に、被害者の寺田さんご夫妻をお招きして訴えてもらったのを鮮明に思い出します。事件はその後、世間からも忘れ去られようとしています。本書を読み、この事件の奥深さ、幅の広さを実感しました。著者は事件当時、日本の司法制度を研究するために来日していたことで、この事件と深くかかわっていくことになった。日本という国が国民・被害者の立場に立たず、加害者であるアメリカの立場に立って事件解決を急いだことが鮮明になっている。また、自治体の県がその先頭に立って、遺族の望む真相究明の妨害をしたことが明らかにされている。
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ニッポンの課長 著者:重松 清 |
あの甲子園で一躍アイドルになったバンビ君こと東邦高校の坂本投手は岡谷鋼機の課長になっていた。あの時いらい坂本投手は勝てなくなった。でも、「負けつづけて、もっと大きなものを手に入れた」と語っている。梅課長に夕焼け課長、町おこし・村おこしに情熱をかたむける公務員課長の姿もすがすがしい。
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